立位をとると、左の仙腸関節付近に激しい痛みが生じる。また、立った状態で左膝を上げると膝の前面から前脛骨筋にかけて強い痛みが出た。体幹後屈と左への側屈でも症状が強くなった。 長時間左下肢に体重をかけていたことで、大腿部と下腿の前面の筋肉が過度に緊張してしまったことが痛みの原因と考えた。 確認すると、左下肢前面以外にも左殿部に強い筋緊張が見つかったので、まずそこに鍼をした。立位は楽になったが、膝を上げる動作と体幹後屈はまだ痛みが残った。さらに下腿にあるツボに鍼を2本打ったところ、膝上げ、後屈とも大幅に可動域が広がり、来室時の痛みの3割程度まで減った。2診目も同様の施術を行い、ほとんど痛みを感じなくなったので、施術を終了とした。

長時間左下肢に負荷をかけ続けたことで、下肢の筋緊張が強くなり、それが腰殿部の痛みの原因となっていた。最も痛みが強かった左の仙腸関節には直接鍼をせず、原因と思われる下腿の緊張にアプローチしたことが早期の症状緩和につながった。痛む場所に目を向けることも大切だが、なぜそこが痛くなったのかという原因を慎重に探ることも重要なことである。