【症状と経過】 2か月前の夜、突然右膝が激しく痛み出して、全く動かせず1歩も歩けない状態になった。病院でMRI検査を受けたところ、医師に「半月板が2か所傷んでいる」と言われた。湿布と消炎鎮痛剤を処方され、近医にリハビリに通っているが、ここ最近は症状にあまり変化が出なくなってきた。一時は松葉杖をつかないと歩くことが出来なかったが、最近ようやく杖なしでも歩けるようになってきた。徐々に痛みは減ってきているが、膝の裏や内側に違和感があり、坂や階段の下りはまた激しい痛みが出るのではないかという恐怖感があり、後ろ向きに降りたりしている。鍼は受けたことがなく、ちょっと怖いなと思っていたが、このままでは趣味の旅行に行くことが出来ないと思い、家族がかかったことがある当治療室に来室した。
〈1診目〉 右足に体重をかけると膝内側の関節裂隙と膝蓋骨の内下方に痛みが生じる。右膝を曲げると膝から大腿後面が詰まるような違和感があり、深く曲げることが出来ない。また、右股関節の内旋が強く、歩行時はつま先から足をついてしまう。触診すると右下肢後面と右殿部に強い筋緊張があったので、関連があるツボに鍼をした。すぐに右下肢に荷重した時の痛みは半分以下に軽減し、屈曲の可動域が治療前より10°改善した。 〈2診目(5日後)〉 「かなり歩きやすくなり、2000歩ほど歩いたが痛くならなかった」とのこと。歩容を確認すると、膝の上がりと曲がりがともに不十分だったので、大腿前面に作用する活法行い、股関節に関係するツボに鍼をした。再度歩行を確認すると、左右の下肢の振り出しにほとんど差がなくなり、スムーズになった。 〈3診目(1か月後)〉 泊りがけで旅行に行けるまでに回復したが、3日前に長時間歩いた後から右足に力が入りずらくなってしまった。下腿後面と大腿後面の緊張が原因と考え、鍼でこれらの緊張を緩和したところ、来室時は出来なかったしゃがんだ姿勢からの立ち上がり動作が可能となったので、施術を終了とした。
膝根(R)・築賓(R)
半月板損傷直後の症状が強かった時期に、股関節周囲や大腿後面などの筋肉が過緊張し、その状態が長く続いたことが、右膝の痛みや違和感がなかなか消えない原因となっていたと考えられる。この例では、股関節と膝関節の動作を妨げている筋肉にアプローチすることで、制限されていた膝の関節可動域を改善するとともに痛みも軽減させることが出来た。
同じ病名や症状であっても効果には個人差があります。また、このページの症例は当治療室の経験であり、鍼灸の一般的な効果を意味するものではありません。
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